映画「岡本太郎の沖縄」を観てきました
2023.02.24
渋谷のユーロスペースで映画「岡本太郎の沖縄」を観てきました。
岡本太郎と沖縄
岡本太郎について、最近まで自分はその名前と太陽の塔と「芸術は爆発だ!」以外ほとんど何も知らなかったわけですが、沖縄関係の本をいろいろ読んでいる中で、岡本太郎が米軍統治時代の沖縄を二度訪れていること、そして「沖縄文化論」という本を出していることなどを知りました。
そしたらなんと、岡本太郎と沖縄をテーマにした映画があるというではありませんか。
それは気になる気になる、観たい観たいと思っていたら、渋谷で上映されるとのことで、さっそく観に行ったわけです。
基本的にはドキュメンタリー映画で、太郎が沖縄で撮影した写真の数々をもとに、撮影地の現在を取材し、変わりゆく沖縄とそこにある変わらないものを探る、といった内容。
中でも重要なテーマになっているのが、久高島のノロ(神事を取り仕切る司祭的な存在の女性)に関する話です。
久高島について
ちょっと沖縄に詳しい人なら、久高島(くだかじま)といえば「神の島」として、その名を知っているのではないかと思います。
観光名所としても有名な、琉球最高の聖地といわれる南城市の斎場御嶽(せーふぁうたき)から、海の向こうに望める小さな島、久高島。
沖縄関係の本をいろいろと読んできましたが、どれを見ても「久高島は特別」といった感じのことが書かれています。
琉球の島々を創った女神・アマミキヨが天から降り立ったとされる場所が久高島であり、島全体が聖域であること。数多くの伝統的な祭事が今も残る島であること。
また、島の土地は神様から借りているものなので私有地という概念が存在しない、とか、島の石や貝殻は絶対に持ち帰ってはいけない、とか、男が決して立ち入ることのできないエリアがある、とか……本当に興味深い島で。
その久高島を、岡本太郎は二度訪れており、ノロに会い、写真に残し、さらには12年に一度行われる久高島における最高の神事、イザイホーの取材までしているのでした。
それがどんなに貴重であることか……詳しくは映画を観ていただくとして。
知ること、学ぶこと
映画の幕開けからまもなく、現在の那覇のゆいレール(都市モノレール)の映像と、車内チャイムのメロディーが流れて、心が沖縄に飛ばされます。
全編にわたってとても丁寧な作りで、音も映像も美しく、引き込まれる作品でした。
先日訪れて歩いたばかりの首里の石畳道や竹富島が登場するのも嬉しい。
岡本太郎が見て、撮影した当時の風景。
現地の人たちの取材の声も、特に注釈の字幕が出るわけでもなく、現地の言葉そのまま。そのため、はっきり聞き取れなかったりする部分も多々あるわけですが、それもまた良かった。言葉の響きと表情で伝わるものこそがリアル。
久高島。
ノロの子孫の方たちの話を中心に、太郎が見た久高島の静かで美しい風景を辿る。
そして、イザイホー。
こんな鮮明な映像でイザイホーの記録が残っていたとは。
前述のとおり、イザイホーは12年に一度行われる特別な儀式で、400年以上前から続いてきたものなのだそう。しかし現在は、島の人口が減って後継者がいなくなり、1978年を最後に行われていないのです。
太郎が訪れて取材したのが1966年のこと。
その24年後の1990年、イザイホーを続けられないことが決まった年の様子も描かれます。400年以上続いてきた大切な儀式を止めざるを得なくなった、それを神に、先祖に伝えなければならない、計り知れない重み。
イザイホーが近年は行われていないという話は、事前に本などで読んで知ってはいたのですが、実際に現地でその時を迎えた人たちの姿が映し出され。
こんな歴史が、こんな背景が、こんな想いがあったのかと。知らないことはあまりにも多いと気付かされます。
変わりゆくものと、変わらないもの。知ること、学ぶことが大切。
そんな映画でした。
呼ばれるその日まで
実はこの前の12月に沖縄に行った際(まだこの映画の存在を知らなかった時)に、当初の計画では久高島に行って一泊しようなどと考えていたのです。
【公式サイト】久高島宿泊交流館
しかし天気が曇りから雨の予報だったので、予定を変更して那覇で過ごしたのでした。
久高島行って一泊しようと考えてたけどああいう場所は天気も心も万全の時に行きたいのでまた今度にしよう
— ユニーニ (@yogurtetkinoko) December 7, 2018
久高島には「呼ばれた」人しか行けない、みたいな話もあり、自分はまだその時ではなかったのでしょう。
そして今回この映画を観て、久高島のことをより詳しく知ることができて。「映画を観て学んでから来い」というお告げだったのかもしれませんね。
今年こそは、行ってみよう。
スピリチュアルとは全く無縁の生活をしていますが、久高島だけは、やっぱり特別なのです。
沖縄文化論-忘れられた日本 (岡本太郎・著/中公文庫)
読みやすい文体で一種の旅行記としても楽しめますが、「文化論」ということで、普通の旅行記にはない視点と考察が満載です。特に八重山の民謡に関する部分は、世界の民族音楽などが好きな人も興味深く読めるはず。映画でもこの本から多くのテキストが引用されているので、振り返って読むことでより理解も深まります。