久高島宿泊記 ~ すべてが特別な「神の島」での1日
2022.05.15

2019年の秋、久高島に泊まったときの思い出話です。
Contents
久高島とは

沖縄本島南部、南城市の港から船で約20分ほどのところにある小さな島、久高島(くだかじま)。
ちょっと沖縄に詳しい人であれば「神の島」としてその名を知っているはず。
琉球の歴史と信仰に深く関わりがある島で、現在でも昔からの神事や慣習が残り、聖地として大切にされている島です。
以前からずっと、沖縄好きとしていつかは行ってみたいと思いながらも、そこは聖地。そんな気軽に行っていいものだろうかと、予習に予習を重ねました。本を読んだり、映画を観たり。
そんな中で目にした言葉が「久高島は呼ばれた人しか行けない」――行ってはならないときに行こうとすると、海が荒れて船が欠航したり、別の用事が入ったりして行けなくなるのだそうです。それなら神様の判断に任せよう、ということで、意を決して計画!
宿泊施設の予約と島への行き方について

久高島行きの船は毎日朝から夕方まで数便出ており、日帰りで行くことも可能です。ただやっぱり特別な島なので、せっかくなら泊まってゆっくり島のことを学びながらめぐりたいところ。
久高島の宿泊施設はほとんどが小さな民宿です。ホテルはありませんが、久高島宿泊交流館という施設があり、民俗史料室なども併設されているとのことで、今回はそこに泊まることにしました。トイレとシャワーは共用ですが部屋は個室になっており、ネット予約にも対応しているので便利です。
宿を押さえたら次は移動手段とスケジュールを確認。久高島行きの船が出ているのは南城市の安座真(あざま)港で、那覇市内から安座間港まで行くのにも結構時間がかかります。
バスで行く場合は那覇バスターミナルから約55分(片道790円/2022年2月現在)。港には広い駐車場があるので日帰りであればレンタカーでもいいかもしれません。
時刻表 | 沖縄 東陽バス 公式ホームページ
今回自分は朝の飛行機で那覇空港に到着して最速で昼過ぎの船に乗りたかったので、やむなく空港からタクシーで向かいました。タクシーだと片道6千円くらいかかってしまうので、時間に余裕があるならバスがおすすめです。
出発の日

出発の日。これから神の島に行くのだという不思議な緊張感。那覇空港に到着して、すぐにタクシー乗り場へ。無口なおじーの運転で安座真港へと向かいました。
40分くらいで安座真港に到着! 聖地への出発地点的な厳かな雰囲気かと思いきや、沖縄らしいのどかな空気と普通に楽しげな感じ。釣り人や若者グループ、外国人観光客もいて賑わっていました。拍子抜けしつつも一安心。


快適に飛ばす高速船に乗って約15分。あっという間に久高島の徳仁港に到着しました。
久高島に到着 ~ 食事処とくじんで昼食

深いエメラルド色の海。照りつける太陽。天気も上々です。
島に降り立つと、不思議な夏休み感のある静けさ。


港から坂道を登って、まずは食事を。港のすぐ近くの「食事処とくじん」で沖縄そばにしましょう。

勝手なイメージで昔ながらの古い食堂なのかと思ってましたが、中はすごく綺麗で快適なお店。
しっかり厚めの三枚肉が乗って食べごたえのある美味いそばでした。

次は島での移動手段の確保。
久高島は周囲8kmほどの小さな島なので、観光する人は基本みんな徒歩か自転車です。
日帰り客の多くは到着したらまずはレンタサイクルのお店(港周辺に数店舗あります)に向かいますが、自分は宿泊交流館で借りる予定なので、とくじんから宿泊交流館まで歩きます。
歩いていると、道端で漁業用の網の手入れをしているおじーが声をかけてくれる。
「おーい、どちらに行くの」
「宿泊交流館です」
「それならそこを真っ直ぐ行って左に曲がったら見えてくるさ」
平和平和。道はわかっていたとしても、こういうのが嬉しい。
言われたとおりに真っ直ぐ行って左に曲がったら、宿泊交流館が見えてきました。

ひとまずチェックインして部屋に荷物を置いていきます。公共施設っぽい受付で安心感ある雰囲気。久高島の見どころや説明がまとめられたイラストマップとチラシをもらいました。
部屋にはそれぞれ久高島のスポットの名前がつけられていて、自分の部屋は「はびゃーん」。神様が降り立ったとされる岬の名前です。ありがたや…。

結構広い畳の部屋で良い感じ。
自転車で島をめぐる
自転車を借りて、いざ島めぐりへ!
各スポットの詳細については、公式のガイドや資料、現地の案内などを確認してから訪れてほしい(状況やタイミングによってルールが変わってたりする可能性があるためです)ので、簡単な説明のみにしておきます。
最低限知っておくべきこととして、島全体が聖域であり、立入禁止の区域や遊泳禁止のビーチがあるということ。小石や貝殻、サンゴなど、決して持ち帰ってはならないこと。
心配な人は、島の人によるガイドツアーなどもあるので利用してみるのもよいと思います。
ピザ浜

まずは宿泊交流館から一番近いビーチ、ピザ浜へ。
ちょっと雲が多いですね。
手作り感ある入口の立札がいい感じです。

イシキ浜
五穀発祥の伝説が残るイシキ浜は、久高島の中でも特に重要な聖地のひとつ。

心洗われる静けさ。

重要なスポットには説明が書かれた案内板が立っています。読んで理解を深めましょう。
ロマンスロード

島の北西側にある遊歩道「ロマンスロード」の休憩所でひと休み。

沖縄本島を眺めると遠目にニライカナイ橋が確認できました。
ハビャーン(カベール岬)
そしていよいよ島の北端、神様アマミキヨが降り立ったとされる岬、ハビャーン(カベール岬)へと続く白い一本道へ。これこそ見たかった景色だ!

ハビャーンは大自然の壮大さを感じさせる琉球石灰岩の岩場。海は透明な深い青色。

ウパーマ浜

島の東側に広がるウパーマ浜。白砂が美しい。
フボー(クボー)御嶽
沖縄における最高の聖域とされるフボー(クボー)御嶽(うたき)は、現在は何人たりとも決して立ち入り禁止。近くを通るだけでもただならぬ空気と静けさ。一応入り口の手前に案内看板も立っていますが、近づくのも畏れ多い感じで、遠くから拝んで去りました。
ヤグルガー

ガイドブックなどで写真がよく使われているのが、美しい海辺の井戸、ヤグルガーの風景。こちらも神事などに使われる重要な場所。石段が老朽化しているとのことで、下へは降りられなくなっています。
メーギ浜

集落のほうへと戻り、漁港の隣に広がるメーギ浜へ。こちらは遊泳可能なビーチで、子供たちが遊んでいました。広場ではキャンプもできるようです。
夕暮れ時のピザ浜とタチ浜
東の空がすっかり晴れたので、最後にもう一度ピザ浜と、その隣に続くタチ浜へ。


そろそろ日が暮れるので、宿泊交流館へと戻りましょう。
夕食はイラブー汁
自転車を置いて、徒歩で夕食に出かけます。そもそも飲食店が少ないため、目指すは昼間と同じ「食事処とくじん」へ。
……と、その前に、港のほうを見ると夕日がいい感じ。

しばし眺めていると猫登場。沖縄の離島あるあるで、久高島も港周辺に猫が多くいます。



暗くなってきたので入店。注文は最初から決めていました。久高島に来たならこれを食べずに帰るわけにはいかない、イラブー汁!
イラブーとはウミヘビのことで、燻製にしたイラブーを野菜と煮込んだ汁物にして食べるのです。久高島では伝統的な手づかみによるイラブー漁が現在でも行われており、島の名物となっています。栄養豊富で食べると寿命が半年伸びると言われているらしい。

運ばれてきたイラブー汁。しっかりとウミヘビ感のある輪切りが入っています。
食感はかなり歯応えがあり、鶏のササミと鰹節とシシャモの卵を合わせたような、なんとも言えない風味。とりあえず身体に良さそうな感じはしました。目的を果たせて満足!
お店を出るともうすっかり夜。集落エリアにも街灯などは無いため、場所によっては本当に真っ暗闇で、電灯必須です。
小さな商店でオリオンビールとプリッツを買って、宿泊交流館へと戻りました。
シャワーを浴びて、屋上で星を眺めて、静かな静かな夜を楽しんで就寝。
静かな朝

朝。10月下旬でも気分は完全に夏の朝。屋上に上がれば鳥の声と波の音。そして東の海からのぼる太陽。素晴らしい朝です。
朝食の前に30分ほど自転車で周辺を巡りました。

ピザ浜で眺める朝日の眩しさ。

清々し過ぎる朝のロマンスロード。

日帰りでは味わえない特別な時間。宿泊にして本当に良かった!
宿泊交流館に戻ったら朝食です。セルフサービスのシンプル&ヘルシーな和食ですが、窓から見える久高島の緑と沖縄の青空を眺めながらいただける贅沢。

朝食後に民俗史料室を見学して、コーヒーを飲んで一休みしたらそろそろチェックアウト。気楽にゆっくり過ごせる良い施設でした。
島を歩く
帰りの船の時間まで、徒歩で港へと向かいながら周辺のスポットを散策します。イザイホーが行われる御殿庭(うどぅんみゃー)や、イラブーの燻製小屋、島の重要な拝殿である外間殿(ふかまどぅん)など。

そして港が近づいてくると、やはり猫登場。

船の待合所にあるお土産屋さんで「イラブーそば」と「イラブーちんすこう」を購入して、港へ。

それにしても、この海の青さ! やはり太陽が高くなる時間帯の海は凄い。この島では全てが神秘。
いよいよ乗船です。帰りは高速船ではなく、少し大きめのフェリーでした(所要時間も10分ほど長い)。


デッキのシートから離れてゆく島を眺めながら、夢から現実へと戻っていくような感覚を味わいます。これからもずっと美しく特別な場所であり続けますように。
旅のあとがき

以上、久高島の宿泊交流館に泊まって島をめぐった一泊二日の旅行記でした。
訪れる前からずっと抱いていた「神の島」のイメージどおりの部分もあれば、まったく印象が違ったところもあり。やっぱり行ってみないとわからないことは多いなとあらためて思い知らされます。
特別な空気と自然とともに、のどかな島の日常も当たり前に存在していて、そんなところも素晴らしく貴重な価値でした。
沖縄の歴史や文化に興味がある人なら是非一度は行ってみてください。
久高島から安座間港へと戻ってきた後は、そこから知念岬まで歩き(険しい坂道でわりとつらい)、南城市の乗り合いタクシーを利用して奥武島まで移動して、天ぷら屋とそば屋を経由してバスで那覇へと帰りました。その辺の話はまた次回。