春はぷろぐれ~ストリーミングで聴ける春向けプログレッシブ・ロックの名盤10選

春はぷろぐれ。やうやう白くなりゆくユニーニ(@yogurtetkinoko)です。

先日AppleMusicのニューリリース欄を観ていたらイタリアのプログレッシブ・ロック・バンド、チェレステ(Celeste)の1976年のアルバムが入ってて、なぜ今? と思ったらリマスターで再発されたとのこと。
チェレステといえば、アコースティック色強めのサウンドに優しげなメロディ、フルートやメロトロンによる幻想的な雰囲気などなど、今の季節にぴったりの音で。

そういえば春に聴きたくなるプログレ、意外とある! と思いましたので、春向けプログレ名盤を10タイトル選びました。

プログレというと、前衛的、変拍子、小難しい、気難しい、古い、みたいなイメージも強く、マニアックなおじさん向けジャンルみたいに思われがちですが、ソフトで心地よい今聴いても新鮮なサウンドもいろいろあるのでした。そして今はストリーミングで過去の名盤が気軽に聴ける時代です。マニアのためだけのものにしておくのはもったいない。

選考基準としては、アコースティック楽器の音色が印象的に使われていること、明るめのメロディ重視、1970~80年代の作品、各アーティスト1作まで、そして、サブスクリプションでストリーミング配信されていること(AppleMusic / Spotify / AmazonMusic)。

ごゆっくりお楽しみ下さいませ(ジャケット画像はAmazonMusicのページにリンクしています)。

Celeste「Celeste (Principe di un Giorno」(1976)

まずはそのチェレステ。イタリアのバンドでこれが唯一のアルバムです。
オープニングのストリングスから哀愁系に向かうかと思いきや、小川のせせらぎ系ギターとピアノとフルートで一気に春の訪れ感。
歌い上げない(イタリア人らしからぬ?)ボーカルに詩情あふれるメロディー。幻想的なエコーや電子音、コラージュなどの効果音も夢見心地。
キング・クリムゾン初期のソフトサイドをよりヨーロピアンに、温暖にした感じです。

ストリングスの音色にはメロトロンが使われまくっています。メロトロンを知らない人のために一言で説明するとテープ音源式のサンプリングキーボードの元祖みたいな楽器です。


Premiata Forneria Marconi「Per Un Amico」(1972)

イタリアン・プログレを代表する偉大なバンド、PFMことプレミアータ・フォルネリア・マルコーニの2ndアルバムです。邦題「友よ」。
シュールで美しい色彩のジャケットのイメージそのままの夢幻的な世界に引き込まれます。
クラシカルなギターとフルートの合奏から荘厳なアンサンブルに突入する1曲目「Appena un Po’」のイントロはもはや神。2曲目「Generale」の目眩く展開とスピード感も鬼。
こちらもチェレステ同様、歌い上げないソフトなイタリア語ボーカルが◎。


Caravan「In the Land of Grey and Pink」(1971)

英国カンタベリーのジャジーでポップなプログレ音楽シーンの中心的バンド、キャラヴァンの3rdアルバム。邦題「グレイとピンクの地」。
これまたジャケットの雰囲気がそのまま音に表れています。どこか陰りのある淡いピンクの風景。
管楽器やオルガンの丸みのあるサウンドに乗せたポップな歌ものですが、演奏にはジャジーな小技が随所に仕込まれて聴きどころ満載。リチャード・シンクレアのジェントルなボーカルも魅力。


Matching Mole「Matching Mole」(1972)

同じくカンタベリーから登場したバンド、マッチング・モールのファースト。邦題「そっくりモグラ」。
元ソフト・マシーンのロバート・ワイアットを中心にしたひねりの効いたジャズ・ロックですが、1曲目のボーカル曲「Oh Caroline」が珠玉のポップソングで春色。とにかく最高。

カンタベリーのバンドは共通して独特の浮遊感ある演奏と暖かみのある音色が特徴かも。全体的に春向けな印象あります。


Mike Oldfield「Tubular Bells」(1973)

イギリスの天才ミュージシャン、マイク・オールドフィールドが19歳の時に一人でほとんどの楽器を多重録音して作り上げた壮大なデビュー作。
イントロ部分が映画『エクソシスト』で使われて有名になったことからホラーのイメージがありますが、実際はケルト民謡などの影響も感じさせる牧歌的で美しいメロディーがどこまでも折り重なって広がっていくようなファンタジックな長編。春に関係なく必聴ですが、春によく合います。

マイク・オールドフィールドもまたカンタベリー人脈との関係が深い人。


Gotic「Escenes」(1978)

スペインのジャズ・ロック・バンド、ゴティックの唯一のアルバム。スペインといえばフラメンコなどの熱いイメージがありますが、フュージョン的な要素を取り入れた演奏は実に軽やかで爽やか。特徴はなんといってもフルートが大活躍していることで、心地よい春風を吹かせています。メロウにとろけるようなエレピも午後の微睡み系。


Música Urbana「Música Urbana」(1976)

同じくスペインからバルセロナのバンド、ムーシカ・ウルバナの1stアルバム。こちらはスペインらしさがより強めで、フラメンコ的なリズムや打楽器、地中海的なメロディも登場するジャズ・ロック。カスタネット叩きまくり。奇妙なひねりの効いた演奏はカンタベリー系の影響も感じさせます。全体的に楽しげ。風通しの良さが春です。


Laurent Thibault「Mais On Ne Peut Pas Rêver Tout Le Temps」(1978)

フランスの偉大なバンドMAGMAの初期メンバーだったローラン・チボーのソロ・アルバム。
男女混声コーラスと独特の太いベースの音色がMAGMA的な異世界感を漂わせながらも、よりドリーミーで幻想的な美しさに包まれるサウンドが素晴らしいです。
後半に近づくにつれて次第にアヴァンギャルドになっていき、波の音や子どもたちの声、銃声などの効果音もまるで映画を見ているかのよう。


Serú Girán「Bicicleta」(1980)

アルゼンチンのバンド、セル・ヒランの3rdアルバム。
後期ビートルズ的なポップさと南米らしいラテンの郷愁を感じさせる美しいメロディの歌ものですが、演奏は超絶テクニカルなジャズ・ロックという洗練の極み。
1曲目の「A Los Jovenes de Ayer」のニューエイジ・ミュージックのような映像的なイントロから10分間に渡って次々と展開される青春系メロディの眩しさといったら。

現在は大物シンガーソングライターとなったチャーリー・ガルシアの繊細な歌声とエレピ、後にパット・メセニー・グループでも活躍することになるペドロ・アスナールの超絶技巧ベースは永遠の輝き。


Bacamarte「Depois do Fim」(1983)

ブラジルのバンド、バカマルテ(正しい発音はおそらく「バカマルチ」)のファーストアルバム。
繊細かつ技巧的なギターとフルートが奏でるメロディを中心に、クラシカルな格調高さと野性的な疾走感が一体化したサウンドが魅力。イタリアのPFMに近いスタイルです。
ソロ歌手としても活躍するJane Dubocのボーカルも聴きどころ。

ちなみにグループ名は昔の海賊などが使っていた「ラッパ銃」のことらしいです。


番外編(ストリーミングでは聴けない春向けプログレ2選)

その他、現在ストリーミングでは配信されていないものの、これはどうしても外せない……! という完全に春向けなプログレ名盤を2タイトル並べておきます(画像はCDの販売ページに飛びます)。

McDonald and Giles「McDonald and Giles」(1971)

キング・クリムゾンの初期メンバー、管楽器のイアン・マクドナルドとドラムのマイケル・ジャイルズによる共作アルバム。英国ポップの粋を感じさせる、軽やかなソフト・プログレの名盤。

Banco「Canto di Primavera」(1979)

イタリアの大物、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソのその名も「春の歌」というアルバム。初期はかなりアヴァンギャルドなバンドでしたが、ニューエイジ~フュージョン的な要素が強まった時期の作品で、南風のような暖かみのあるメロディが素晴らしいです。

あとがき

以上、春に聴きたいプログレ名盤特集でした。

ガチなプログレ者の方が見たら「あれが入っていないとは!」など当然出てくるかと思いますが、それはぜひ各自でどこかで発表していただけたらと思います。見たい知りたいみんなの春プログレ。

いざ選んでみるとやっぱり自分の趣味の傾向がわかるというか、カンタベリーの多さ!

あと個人的に春といえばイタリアなイメージがあって、それはきっとフェリーニ監督の映画「アマルコルド」の影響です。見たことない方は今の季節に見ると最高なので是非どうぞ。

arrivederci!

Music特集・まとめ

2018/03/29

書いた人:

一人旅ときどきギターと太鼓。年々増していく時の流れの速さと記憶力の低下に危機を感じ、いろいろなことを記録しておくために書き始めました。元CDショップ店員。現在はIT系のエンジニア。寒さに弱すぎるため旅行先は基本的に南の島です。釣りたい魚はアカジンミーバイ。

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