【ライブレポート】New Zion Trio with Cyro Baptista – 熊本県山鹿市「天聽の蔵」(2017/08/27)
2018.02.10
2017年8月27日、熊本県山鹿市「天聽の蔵」にて行われたNew Zion Trio with Cyro Baptistaの来日公演に行ってきました。
レゲエとジャズとブラジルでマジカルな『Sunshine Seas』
New Zion Trio(ニュー・ザイオン・トリオ)はニューヨークで活躍するジャズ・ピアニストのジェイミー・サフト(Jamie Saft)を中心にしたグループです。ジャズのピアノ・トリオのスタイルに、レゲエ~ダブの要素を融合させた音楽性で、2011年のデビューアルバム『Fight Against Babylon』が話題に。2013年にはセカンド『Chaliwa』を発表。そして2016年にリリースされた現時点での最新作が、ブラジルの鬼才パーカッショニスト、シロ・バチスタ(Cyro Baptista)を迎えた New Zion W. Cyro 名義によるアルバム『Sunshine Seas』。
シロ・バチスタはブラジルのサンパウロ出身の打楽器奏者で、単なるラテン・パーカッションの枠にとどまらない、様々な楽器や道具を駆使して変幻自在のリズムとサウンドを創り出すマジカルな人。多くの有名アーティストの作品に参加しています。
ジャズ×レゲエにブラジルの深みまで加わった『Sunshine Seas』、それはそれは素晴らしいアルバムで、個人的にも2016年下半期のトップ愛聴盤みたいな感じだったので、今回の来日を知った時点でこれはもう行くしかない選択。当初行こうと考えていた同日に横浜で行われる某アイドルイベントを諦め、会場へのアクセスを調べたのでした。
それにしてもまさか熊本で観れるとはね……「天聽の蔵」ってどの辺だろ?……グーグルグーグル……ややや!? 山鹿!?
会場は歴史香る山鹿の酒蔵
会場となる天聽の蔵(てんちょうのくら)は、熊本県北部・山鹿市にある、昔ながらの酒蔵をそのまま利用したイベントスペース。有名な八千代座(国指定重要文化財にもなっている明治時代から残る芝居小屋)のすぐ近くにあります。
この山鹿市というのが、筆者の住む熊本市内からは車で1時間くらいなのですが、JRは通ってないしバスは帰りの最終が19時台という、何気に近くて遠いエリアなのでした。
良いライブを観たらきっとビールを飲みたくなるに違いない、ということで本当は公共交通機関で行きたかったのですが、仕方ないのでビールはあきらめて、はるばる自力で向かうことに。
せっかくの機会だったので早めに向かっていろいろと観光もしてきました。別記事でレポートしていますのでよかったら。山鹿よいとこ。
90分間の波に揺られ
そんなこんなわけで当日。今回は開場が15時で開演が19時。開場早っ! どういうことかと思えば、会場の中庭で様々なフードや雑貨の出店が並ぶマルシェが行われていたのでした。
ハーブウォーターを買い、ケルト的な音楽を演奏しているバンドを眺めながら開演を待ち、いよいよ実際のライブ会場となる「蔵」の中へ。
奥の壁側にステージがあり、楽器がセッティングしてあります。
左からグランドピアノとフェンダー・ローズ、ベースとアンプ、ドラムセット、そして様々な打楽器群……! ここはやはりシロ・バチスタの打楽器パフォーマンスが見やすく、同時に全体も見渡せるフロア中央からやや右寄りで待機。
天井からは今回のツアーのイラストにもなっている4羽のフクロウの切り紙が吊られています。
客層も幅広く、子供連れのファミリーも多くピースフルな雰囲気。熊本でもこんなに集まるのだな、というほどの賑わいでした。
19時開演から数分押しでメンバーが登場して演奏開始。
楽しく気持ちよく揺られているうちに90分が過ぎていて、セットリスト等は覚えていないので全体の印象を。
ずっしりと重みのあるレゲエのグルーヴを生み出すブラッド・ジョーンズ(Brad Jones)の5弦ベースとベン・ペロウスキー(Ben Perowsky)の硬質なドラムの上で、ジェイミー・サフトの美しいピアノがダブ的なエコーで全体を包み込んでいく。そしてその中で次々と打楽器を持ち替えながら、またボーカルやボディパーカッションも駆使しながら、映像的なサウンドとリズムを重ねて溶け込ませていくシロ・バチスタ。
メロウな音響と横揺れの圧倒的な心地良さ以上に、なにより笑顔になれる感じの楽しさと面白さがあったのは、やはりシロ・バチスタのパフォーマンスに拠るところ大。
不思議な楽器を持ち出しては不思議な音色を奏で、謎のホースのようなものをブンブン振り回したり、ウォッシュボード(のような金属板)をエプロンのように身にまとって激しくかき鳴らしたり、おもちゃの弓矢を撃ちまくったり……視覚的なインパクトが凄い。さらには振り付けと掛け声を客席にやらせたり、最前にいた子供のお客さんに打楽器渡してみたり、どんどん会場全体を巻き込んでいく。
これは何も知らずに初めて見た人でもきっと引き込まれてしまうでしょう。
その他、印象に残っている場面。
ドラムとパーカッションの2人での太鼓祭り的なパートでの熱狂!
ジェイミー・サフトはフェンダーローズ弾きながら片手でエフェクター操作して演奏をリアルタイムにダブ化。職人!
アルバムでは女性ボーカルによるタイトル曲「Sunshine Seas」は、ベースのブラッド・ジョーンズがボーカルを担当! カッコ良すぎ。おしゃれ帽子!
「スティーヴィー・ワンダーがマイケル・ジャクソンのために作った曲」的な曲紹介からの「I Can’t Help It」のカバーを披露。盛り上がる!
このままずっと朝まで続けばいい、と思いながら、最後アンコール1曲を含め、約90分間の幸せな時間でした。
終演後、外に出ると、中庭にシロ氏発見!
感動を伝えたかったですが、次々と囲まれて写真撮影など忙しそうだったので、心の中でオブリガードを唱えて会場を後にしました。
熊本で、まさかの山鹿で、こんな体験ができたことがマジカルです。
あらためて、メンバーおよび招待元・関係者の皆様に感謝申し上げます。
良いライブを観た後は、やはりビールが欲しくなりましたが、飲むと帰れなくなるので、そんな時には温泉です。
山鹿温泉の有名店「さくら湯」に寄ってから、山鹿にサラヴァしました。
Saravah!
New Zion w. Cyroのアルバム『Sunshine Seas』は、AppleMusic、Spotifyなどでも配信されています。是非!