2017年ブラジル音楽~よく聴いたアルバム20選【動画&試聴あり】

2018.02.17

2017年も残りわずかということで、毎年恒例の(今回が初めてですが)年間セレクション的なものをやりたいと思います。まずはブラジル音楽編。

基本的にストリーミングで聴けるものがほとんどですが、ブラジルではアーティストが自身のサイトで音源を無料配布していたり、YouTubeで全曲のフル音源を公開していることも多い(今や普通)です。確認できたものはリンクしていますので、定額ストリーミングサービスを利用していない人もチェックしてみてください。
※AmazonでCDの取り扱いがあるものはジャケット画像も載せています。

1. Vem – Mallu Magalhães

サンパウロ出身の女性シンガーソングライター、Mallu Magalhães(マルー・マガリャンイス)の4枚目のアルバム。
2007年にMySpace発の15歳の弾き語り少女として登場した彼女も今や25歳で一児の母。サンバ、ボサノヴァ、MPB、古き良き時代のテイストを漂わせながら、現代的なポップさと軽やかさで新鮮な歌を聴かせてくれる、本当に素晴らしいアーティストになりました。変わらぬ可愛さで!

2. Marimbaia – Leandro César

音楽家であり創作楽器の製作者でもある Leandro César(レアンドロ・セザール)のファーストアルバム。Uaktiの楽器技術者を務めていた人だそうで、なるほど納得感あるサウンド。
木やガラスや金属など、様々な素材によるマリンバのアンサンブルを中心にした作品で、実験音楽や環境音楽的な雰囲気もありつつ、オルゴールのような美しさと心地良さで、とにかく素晴らしいです。寝る時用のBGMとしても愛用しました。

3. Galanga Livre – Rincon Sapiência

サンパウロのラッパー兼ビートメイカー、Rincon Sapiência(ヒンコン・サピエンシア)の1stフルアルバム。HIP HOPですが濃い目のブラジル音楽要素満載。スクラッチがクイーカ状態の「Meu Bloco」。ビリンバウに乗せた「A Coisa tá Preta」。ファンキ要素入った「Ponta de Lança」。どれもこれも最高。

4. Espiral de Ilusão – Criolo

サンパウロのラッパー兼シンガーソングライター、Criolo(クリオーロ)の4枚目(企画共演盤を除く)のアルバム。
もともとアフロビートとサンバ・ロックとHIP HOPをミックスしたような独特の作風が魅力でしたが、今作はド真ん中のサンバ! そしてこれがまた良い味出してて新たな魅力全開。

5. Natureza Universal – Hermeto Pascoal & Big Band

偉大な音楽仙人 Hermeto Pascoal(エルメート・パスコアル)。2017年はGrupo名義での久々の新作や、70年代の貴重な音源の再発などもあり充実していましたが、1枚選ぶならビッグ・バンドとの共演によるこのアルバム。81歳にしてなお、今までになかった新鮮な驚きとめくるめく楽しさを聴かせてくれる無限の創造性!

6. Xenia – Xênia França

バイーア出身でサンパウロのバンド Aláfiaのボーカルとしても活動している女性シンガー、Xênia França(シェニア・フランサ)の1stソロアルバム。
バイーア色の濃いアフリカ的なリズムにジャズやエレクトロニカの要素が加わったサウンド。共同プロデュースに Pipo Pegoraro(ピポ・ペゴラーロ)と、昨年のアルバムが超素晴らしかった Lourenço Rebetez(ロウレンソ・ヘベッチス)が関わっているとのことで、なるほど納得。

7. Aqui – Os Ritmistas

Domenico Lancellotti(ドメニコ・ランセロッチ)を含む4人組打楽器バンド、Os Ritmistas(オス・ヒチミスタス)の10年ぶりの2ndアルバム。
楽しい太鼓と良いメロディと遊び心あふれるサウンド満載。ファーストは国内盤も出たのに今回は全く話題にならなかったのはなぜなんでしょう?

8. Diários de Vento – Joana Queiroz

リオ出身の女性クラリネット奏者、Joana Queiroz(ジョアナ・ケイロス)の2016年12月にリリースされた作品。自然音と声とクラリネットのソロを重ねたような、ミニマルで実験的で、不思議な美しさあふれるサウンドです。
イチベレーのオルケストラ・ファミリアのメンバーで、エルメート・パスコアルのアルバムにも参加していた人とのこと。日本でも音楽好きの間でかなり注目されている模様。

9. Tudo Tudo Tudo Tudo – César Lacerda

ミナスの男性シンガーソングライター、César Lacerda(セザール・ラセルダ)の3作目のアルバム。アコースティック中心の美しいサウンドでシンプルに良い曲を詰め込んだ感じ。
心地良く聴ける歌ものです。

10. Tu – Tulipa Ruiz

サンパウロの女性シンガーソングライター、Tulipa Ruiz(トゥリッパ・ルイズ)の4作目のアルバム。ほぼ全編シンプルなギターとパーカッションのみによる作品になっており、曲と声の良さが際立つ仕上がり。個人的にはまさにこういうのを待っていた! という感じです。過去のレパートリーの新バージョンも含まれています。

11. Oyá Tempo – Luiza Lian

サンパウロの女性シンガーソングライター、Luiza Lian(ルイザ・リアン)の作品。「álbum visual(ビジュアルアルバム)」と銘打たれており、全8曲とも映像あり。全編通しで約25分間の動画作品として公開されています。アルバムとしては2作目。
エレクトロニックなHIP HOP~ベース・ミュージック的なサウンドもサンパウロならではの雰囲気で刺激的。

12. Recomeçar – Tim Bernardes

オールディーズ風味のポップ・ロックを聴かせるサンパウロの3ピースバンド O Ternoのギター&ボーカリスト、Tim Bernardes(チン・ベルナルデス)のソロアルバム。
70年代の英国のシンガーソングライターのような、しみじみと染みる歌心と室内楽ポップ的なサウンドが素敵な作品。

13. Cícero & Albatroz – Cícero

リオデジャネイロの宅録系シンガーソングライター、Cícero(シセロ)がバンドとともに作り上げた4作目。

14. Âmago – Octavio Cardozzo

ミナスの男性シンガーソングライター、Octavio Cardozzo(オクタヴィオ・カルドーゾ)のファーストアルバム。
もともとベロオリゾンチのブロコ(=カーニバルのバンド)のボーカルとして活動している人のようです。
軽快なリズムと伸びやかなボーカルで良い曲を聴かせるブラジルらしい歌ものですが、ロックな勢いのあるバンドサウンドも楽しい内容。

15. Vai Passar Mal – Pabllo Vittar

サンルイス出身のドラァグクイーン歌手、Pabllo Vittar(パブロ・ヴィタール)のファーストアルバム。Major Lazerとの関わりで世界にその名が知られつつありますが、楽曲は様々なブラジル音楽の要素が詰まったブラジルならではのハイパー・ミクスチャー・サウンド。サンバとファンキとトラップとEDMとその他諸々が高次元で融合してひたすらキャッチーな最先端ポップになっているという面白さなので完全に楽しいです。「K.O.」のYouTube視聴回数は2億超え。

16. Caravanas – Chico Buarque

MPBの大御所 Chico Buarque(シコ・ブアルキ)御年73歳の約6年ぶりとなる最新作。しみじみと深みある味わいで良かったです。統一感のある美しいサウンド。「As Caravanas」ではファンキのリズムを取り入れてビートボクサーと共演するなど、感性の若さもさすが。

17. Gragoatá – Gragoatá

リオデジャネイロのニテロイ出身の女性1人と男性2人によるバンド、Gragoatá(グラゴアタ)の2ndアルバム。
MPBとトロピカリズモに影響を受けているとのこと。染みる感じの良い曲多いです。

18. Tropical Lacrador – Juventude Bronzeada

ベロオリゾンチのブロコ、Juventude Bronzeada(ジュヴェントゥーヂ・ブロンゼアーダ)のファーストアルバム。
単純に楽しく「あぁブラジルだな~」という気分で聴けるやつです。音はバイーア的なトリオ・エレトリコ~アシェーな感じ。

19. Radiola NZ, Vol. 1 – Nação Zumbi

ペルナンブーコ州ヘシーフィのマンギビート~ミクスチャーロックバンド、Nação Zumbi(ナサォン・ズンビ)による、国内外の名曲を集めたカバーアルバム。ジルベルト・ジルやチン・マイア、ビートルズにデヴィッド・ボウイにマーヴィン・ゲイまで、ヘヴィーなバンド・サウンドとブラジル北東部の太鼓のリズムに乗せてカバーしてます。
ロックおじさんたちが好きなことやってる感じで楽しく聴ける仕上がり。

こちらは70年代のブラジルのバンド、Secos e Molhados(セコス・イ・モリャードス)のカバー。

20. Meio Que Tudo É Um – Apanhador Só

リオグランヂドスルのちょっとエクスペリメンタルな3人組インディーロックバンド、Apanhador Só(アパニャドル・ソー)の3rdアルバム。
ロックバンド色が薄れて実験的MPBといった雰囲気が強くなっています。面白い。

21. Outro Lugar – Tetê Espíndola

入れ忘れたので21位に追加……。マトグロッソ・ド・スル州カンポ・グランヂ出身の女性歌手、Tetê Espíndola(テテー・エスピンドラ)の18枚目のアルバム。
サンパウロのアヒーゴバルナベー周辺と関わりの深い人で、アヴァンギャルドでフリーで大自然な感じの唯一無二の歌世界。
全体的に民謡色強めのシンプルでアコースティックな演奏で、小鳥のような、ケイト・ブッシュのような、テテーのマジカルな歌声を堪能できます。

タイトル曲はシタール入り。

番外編: Salte em pé pra longe do raio e do vento – Guga Bruno

リオのインディーロック系シンガーソングライター Guga Bruno(グーガ・ブルーノ)が、ビートルズの名盤『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』のアルバム全曲をポルトガル語歌詞の替え歌(?)でカバーしたアルバム。同年のシングルである「Strawberry Fields Forever」と「Penny Lane」も入ってます。
どれもシンプルなアコースティックアレンジですが、いろいろと小技が効いてて面白いです。

ストリーミングでは未配信で、オフィシャルサイトでの無料配布のみ。手作り感あふれる録音といいこのジャケットといい、非公式のカバー作品のようなので、おまけとしてご紹介しました。

まとめ

10選にするつもりが気づいたら20選になり、そこからさらに22選になっていました。順番はあまり考えず、数を数えるためになんとなくつけたものです。
できるだけ色んなジャンルと地域から選ぶようにしようと思いましたが……サンパウロが多いですね。さすが大都会。

ストリーミング時代になり、なんでも気軽に聴けてスキップも簡単、プレイリストで曲順組み換えも自由自在になったことで、全世界的にアルバムより単曲(シングル)重視の世の中になっていきそうな雰囲気もありますが、ブラジル音楽に関してはまだまだ「アルバム聴き」でじっくり楽しめる作品が大充実で、音楽大国の揺るぎなさをあらためて実感しました。

それではまた1年後に……!

Music特集・まとめ

2017/12/25 (更新:2018/02/17)

書いた人:

一人旅ときどきギターと太鼓。年々増していく時の流れの速さと記憶力の低下に危機を感じ、いろいろなことを記録しておくために書き始めました。元CDショップ店員。現在はIT系のエンジニア。寒さに弱すぎるため旅行先は基本的に南の島です。釣りたい魚はアカジンミーバイ。

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Junineblog「未知との遭遇の日々」は、好奇心を忘れず生きていくためにいろいろな場所へ行き、いろいろな音を聴き、いろいろなものを食べよう、というブログです。

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