フランスのバンド MAGMA の来日公演を大阪で観た話(14年ぶり2回目)

1960年代末から活動しているフランスのジャズロック〜プログレッシブロックバンド MAGMA が、2019年9月に数年ぶりの来日公演を行ったので観てきました。
東京で2回(ただし初日はアコースティックセットによる特別編成)、大阪で1回の計3日間の日程でしたが、自分が来日の情報を知った時には東京での通常編成の日はすでに完売……!
昔から大好きなバンドなのになぜもっと早く気づかなかったのか……最近すっかりライブ情報に疎くなってしまいました。
さてどうしたものか? バンドの中心人物であるドラマーのクリスチャン・ヴァンデは現在72歳……いつまで続けてくれるだろうか……大阪まで行くしかなかろうか……直前まで悩んだ末、東京公演のセットリストを見たところ「Ëmëhntëhtt-Rê」、「Theusz Hamtaahk」3部作メドレー、そして「De Futura」という超強力な内容! 今年の夏に新作(といっても昔からずっと未完成だった曲の完成版)として「Zess」がリリースされたばかりですが、それを演るわけではないのね(ちょっと特殊な作品なので予想はしてましたが)……ともかく、やっぱり曲目を見ると観たくなる。これは行かねば後悔する。
というわけで、大阪公演の日はちょうど日曜日だったこともあり、当日券が出ることを確認して新幹線で向かったのでした。
Contents
新幹線で大阪へ
熊本に住んでいた頃は福岡に行くために新幹線を頻繁に利用していましたが、関東に引っ越してからはほとんど利用する機会がなくなってしまいました。
久々の新幹線、せっかくなのでそれも楽しもうと、崎陽軒のシウマイ弁当を買ったりして、いざ大阪へ。

思えば大阪に来るのも久々です。2017年のカエターノ・ヴェローゾの来日公演ぶりでした。
実は自分は5~6年ほど前、NMB48や神戸のご当地アイドルにハマっていた時期があり、関西はよく訪れていたのでした。まだ今みたいに旅行そのものが趣味になる前の話。あの頃は熊本から夜行バスや関空へのジェットスターを使って、宿泊はネカフェ、もしくは関空エアロプラザの休憩所で。同じCDを何枚も買わねばならなかったので(…)とにかく節約していましたね。懐かしい。
そんなこんなで大阪に到着。まずは会場の場所をチェックして、当日券の販売開始まで待機。
会場となるサンケイホールブリーゼは超おしゃれで綺麗な建物の中にありました。

無事に当日券を購入し、開場時間まで近くのカフェでコーヒーを。周りの席から聞こえてくる言葉に、ああ大阪だなーと懐かしくなります。
開場

いよいよ開場。今回のツアーには「50 ans après」というタイトルが付けられていました。意味は「50年後」。今年は MAGMA 結成50周年の年でもあり、歴史の総括的なテーマがあるのかもしれません。
MAGMA のファンは、彼らの音楽だけでなくそのビジュアルコンセプトなど(特徴的なシンボルマークがあります)も含めて好きな人が多く、グッズ販売コーナーも大いに賑わっていました。
自分も初めて観た時にはTシャツとチョーカーを買ったのを思い出しました。
初めて観た時……あれは2005年のこと……なんともう14年前!
14年前の思い出
そうなのです、MAGMA を観るのはこれが2回目で、実に14年ぶりになるのでした。前回も大阪で、その時は(今は無き)心斎橋のクラブクアトロが会場でした。
当時19年ぶりの新作として『K.A』がリリースされたタイミングでの来日ツアーで、セットリストも「K.A」と、その次にリリースされることになった「Ëmëhntëhtt-Rê」、アンコールは「Kobaia」とヴァンデ氏の歌うコバイア語バラード。オールスタンディングのフロアで、爆発的な演奏に大いに盛り上がったのでした。
思い出を振り返りつつ、いよいよホールの中へ。座席は当日券にしては良すぎる席で、ステージ中央真正面の前から15~6列目のあたり。映画館のような傾斜のある造りのホールなので前の人に視界を遮られることもなく、ステージ全体がよく見える場所です。
MAGMA ライブレポート(2019.09.22)
開演。
(セットリストは東京と同じだろうから、まずは「Ëmëhntëhtt-Rê」だな。「ごぉぉぉぉーーーん」とヴァンデが両側のシンバルを叩くのだな。来るぞ来るぞ……)
―――と備えていたら、なんということでしょう。
「ハマタイッ!」
ボーカル、エルヴェ氏の叫びを合図に、まさかの1曲目「Köhntarkösz」!
聴けるとは思っていなかったので、この時点でもう感無量。意味がわからないくらい感動してその後はあまり覚えていない……と言いたいところですが、「Köhntarkösz」は長ーく重ーく淡々と進む曲なので、次第に状況が把握できてきました。
前回観た時からは半分以上のメンバーが入れ替わってしまっているのですが、曲の底辺を支えるベースのフィリップ・ブソネは変わらず圧倒的な存在感で、やっぱり凄い。
MAGMA のベーシストと言えばどうしても70年代の全盛期を支えた伝説的な2人、ジャニック・トップとベルナール・パガノッティの名前が真っ先に出てくるのですが、現在まで含めた活動歴の長さと貢献度で考えると、今や完全にフィリップ・ブソネこそが MAGMA を代表するベーシストではないでしょうか。
ステラとイザベルはやっぱり可愛らしいおばさまという感じで、前に出てきたりステージ奥に引っ込んだりしながら美しいコーラスを聴かせてくれます。
エルヴェ氏、パワフルで良い声。ヴィブラフォンのブノワは動きが大きく観ていて楽しい。この2人ももう10年以上の在籍で、現在進行系の MAGMA には欠かせない存在になってますね。
ギターは前任のジェイムズがキレた感じで超好きだったのですが、新加入のルディ・ブラスは細身の長身でやたらと絵になるカッコよさ。
鍵盤のジェローム、職人の安定感。ドラムが暴れまくる MAGMA の楽曲では、リズムを支える上でキーボードの役割はものすごく重要だなーと再確認。
そして、とても70過ぎとは思えないクリスチャン・ヴァンデ! 叩きまくり。打ちまくり。
終盤のスピードアップしていく熱狂的な盛り上がりで再び意識が飛ぶ……! もう最高でした。
続いて「Theusz Hamtaahk」3部作メドレー。「Theusz Hamtaahk」「Ẁurdah Ïtah」「Mekanïk Destruktïw Kommandöh」という、それぞれアルバム1枚分ほどの長さのある楽曲を50分ほどにまとめたものになっていました。
「MDK」はできれば最初からフルで聴きたかったですが、これはこれで貴重なものが観られて大満足。「Da Zeuhl Wortz Mekanïk」以降のパートに途中クリスチャン・ヴァンデによるボイスパフォーマンスが入るという構成。コルトレーンが降りてきた的な熱唱でした。
最終パートの盛り上がりも言うまでもなく。終わった瞬間客席総立ちでの大拍手でした。
アンコールは「De Futura」。「MDK」で盛り上がり過ぎたこともあり、選曲も東京公演と同じで予想できていたので「よしよし来た来た」と、わりとクールダウンしつつ観ていたのですが、中盤からどんどん暗黒に包まれていく感じ……おそらくステラ? が謎の装置で電子音を放ち始めてからはもう宇宙。
今回、全編通してステージ照明の演出が入っており、正直ちょっとベタな感じもあったのですが、「De Futura」終盤でステージまで見えなくなるくらいの暗闇の中あの演奏が鳴り続けていた時間はさすがに震え……惑星コバイアに運ばれてしまった……
終演。大拍手!
というわけで、本当に楽しめた! 無理して来て良かった! というライブでした。
MAGMA “50 ans après” OSAKA 2019.09.22 @サンケイホールブリーゼ
SETLIST:
1. Köhntarkösz
2. Theusz Hamtaahk trilogie (Medley)
ENCORE:
3. De Futura
MEMBER:
Christian Vander (Drums, Vocal)
Stella Vander (Vocal, Percussions)
Isabelle Feuillebois (Vocal)
Hervé Aknin (Vocal)
Jérôme Martineau-Ricotti (Keyboards)
Rudy Blas (Guitar)
Philippe Bussonnet (Bass)
Benoît Alziary (Vibraphone)

大阪で一泊して帰ろうと考えていたのですが、時間的に全然間に合いそうだったので、余韻を持ち帰るべくそのまま駅へ。
日曜夜の新幹線、こんなに空いてるんですね。ほぼ貸し切り状態みたいな車両の自由席でゆったり、柿の葉寿司を食べながら横浜へと帰りました。
おわりに
MAGMA の音楽は自分にとって、生命力を感じさせるソウルミュージックのような存在で。
独自の創作言語で歌ったり、異様な重低音と儀式のような反復コーラスを前面に打ち出した楽曲だったり、長尺のSF的なストーリーに基づいたコンセプトだったり、etc…前衛的でヤバいプログレバンド、みたいなイメージで語られることの多いグループですが、本質はやはりソウルではないかと、ずっとそう思って聴いています。生きる活力。
なので疲れた夜などに大音量で聴く。
生命力、あるいは人間力ですね。ジョジョみたいな感じ。
聴いたことないけど気になってきた、という人がもしいたら、Spotify や AppleMusic などのストリーミングでも多くの作品が配信されているので是非チェックしてみてください。
では!
Hoï Hamtaï Sïm rïm
Hamtaï…