2021年によく聴いたアルバム25選【年間ベスト】
2021.12.30

あっという間の2021年でした。
毎年やっているので今年もよく聴いた、良かった、好きだったアルバムを25枚選びました。ステイホームな生活にもすっかり慣れて、音楽の聴き方や好みも今の生活に合ったスタイルに落ち着いてきたような感覚があります。
昔はとにかく幅広く新譜をチェックして印象に残ったものを振り返る、みたいなところもありましたが、最近は気に入った作品をずっと繰り返し聴いているうちに気づけば1年が終わる、という感じですね。
例によってあまり意味はありませんがなんとなく順位も付けています。それぞれ動画も入れてますのでごゆっくり! お楽しみください。
Contents
- 1. Indigo Borboleta Anil – Liniker
- 2. Meu Coco – Caetano Veloso
- 3. ハララルデ~与那国のわらべうた~ – 太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽
- 4. Sankofa – Amaro Freitas
- 5. Segue o Baile – Luana Carvalho
- 6. ガジュマル – ネーネーズ
- 7. Sucesso Bendito: Arthur Nogueira Canta Caetano Veloso – Arthur Nogueira
- 8. Sling – Clairo
- 9. Collapsed in Sunbeams – Arlo Parks
- 10. Present – 洪安妮
- 11. Nonante-Cinq – Angèle
- 12. jams EP – Luna Li
- 13. Raio – Domenico Lancellotti
- 14. Um Gosto de Sol – Céu
- 15. Stairs – Stella Jang
- 16. Septet – John Carroll Kirby
- 17. Bloom – Rosie Frater-Taylor
- 18. GRACINHA – Manu Gavassi
- 19. De Primeira – Marina Sena
- 20. Solar Power – Lorde
- 21. En Anglais – Mathieu Boogaerts
- 22. Esperança – Mallu Magalhães
- 23. Caetano Veloso Além do “Transa” – Ayrton Montarroyos
- 24. Magic Mirror – Pearl Charles
- 25. Homme Studio – Henri Salvador
- まとめ
1. Indigo Borboleta Anil – Liniker
サンパウロのシンガーソングライター、リニケル。バンド Os Caramelows と離れ、ソロ名義としては初となるフルアルバム。果たしてどういう方向に向かうのかと思いましたが、スーパー・メロウなサンバ・ソウルの素晴らしさは変わらず、オーケストラも加わった優雅なサウンドに宇宙ブラジル音楽の芳醇さが深く深く広がり、見事に期待を超えていく聴き応えありすぎな内容でした。豪華なゲスト陣も嬉しい(ミルトン・ナシメント!)。
2. Meu Coco – Caetano Veloso
カエターノ・ヴェローゾ、久々にロック・バンド編成ではない、過去曲のリアレンジでもない、純粋な新曲によるアルバム。もうそれだけで最高ですが、内容も文句なしのカエターノすぎるカエターノでした。ロック・バンド期には無かった打楽器と管楽器、オーケストラによるリズムとハーモニーがよみがえり、ロック・バンド期からしっかり引き継がれたミニマルな鋭さと絡み合う、79歳にしてなお「新しいカエターノ」を更新していく凄さ。無限リスペクト。
3. ハララルデ~与那国のわらべうた~ – 太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽
日本最西端、与那国島の「わらべうた」を集めたアルバム。素朴なメロディーの短い歌がほとんどなので、歌詞の意味がわからなくても言葉の響きやリズムで楽しめるような親しみやすい内容になっています。歌詞には与那国島の過酷な歴史が描かれたものもあり、意味を知ることでより深く味わい学ぶこともできるでしょう。声のみのアカペラで歌われているものが多く、これこそが歌だ、歌そのものの美しさだ、という感動もあります。個人的にカエターノ・ヴェローゾの名盤「Joia」の感触を思い出したりもしました。
ボーナストラックとして与那国島の代表的な民謡6曲が追加収録されているのも嬉しいところ。
4. Sankofa – Amaro Freitas
ブラジル北東部ペルナンブーコのピアニスト、アマロ・フレイタスの3作目。これまで通りのトリオ編成による作品で、流れるように広がるピアノ、打ち寄せる低音、さざ波のようなシンバル、そして炸裂する変拍子ポリリズム。優美かつ壮大なジャズと宇宙ブラジルの伝統と野生が融け合う感じの素晴らしさ。
5. Segue o Baile – Luana Carvalho
ルアナ・カルヴァーリョのフルアルバムとしては2017年のデビュー作以来4年ぶりの新作。これがなんと「ファンキ」アルバム、しかし音の質感はアコースティックで旋律はノスタルジック。自身のオリジナル曲のほかファンキ歌手のカバーも多数収録されていますが、全体的に統一感のある仕上がりで、とても面白い。
昨年リリースされたEP、ステイホーム期間に制作されたサンバ・カバー集(偉大なサンバ歌手である母ベッチ・カルヴァーリョのレパートリー)とは全く違うコンセプトながら、共通の空気が確実にあって、刺激的に心地よく聴けます。
6. ガジュマル – ネーネーズ
沖縄のネーネーズ、デビュー30周年を記念したアルバムで、インディーズ時代のベスト選曲を現メンバーで新録音した作品、ということで名曲ばかり。コロナ以降ずっと配信ライブを継続的に行っており、外出や旅行ができない時期に自分もよく観ていました。そこで何度も聴いた曲たちがついに音源で聴けるという喜び。ステイホーム期の思い出がいろいろとよみがえります。来年こそは久しぶりにライブハウス島唄(ネーネーズの拠点である那覇市のライブ居酒屋)にも行けますように。
ネーネーズCD最新作【ガジュマル】2021年6月23日発売 | ライブハウス島唄
7. Sucesso Bendito: Arthur Nogueira Canta Caetano Veloso – Arthur Nogueira
ブラジル北部パラー州ベレンのシンガーソングライター、アルトゥール・ノゲイラによるカエターノ・ヴェローゾ楽曲カバー集。エレクトロポップ的な音楽もやってる人ですが、ここではシンプルにほぼ声とギターだけでじっくり聴かせる。絶妙にマニアックな選曲も、低めのボーカルによる独自性あふれる表現も素晴らしくて、何度も聴きました。
今年は歌手の Ayrton Montarroyos もカエターノのカバー集を発表しており、そちらもまた違った魅力(ひたすら美麗)ですごく良かったです(23位に選びました)。
8. Sling – Clairo
アトランタのシンガーソングライター、クレイロの2作目。もともとロウファイ宅録ポップのようなイメージで前作はそんなにちゃんと聴いてないのですが、今回はジャケットから70年代の名盤の香り……と思ったら音もそんな感じになってて完全に好みでした。トッド・ラングレン的な鍵盤がもう珠玉。ベッドルーム的ドリーミーさがしっかり保たれているのも今の時代にぴったりの心地良さ。
9. Collapsed in Sunbeams – Arlo Parks
ロンドンのシンガーソングライター、アーロ・パークスのデビュー・アルバム。気づいたら何度も聴いていた系。手作り感のあるベッドルームR&B的な心地良さと生々しくシリアスな青春風味が、どこか懐かしくもあり心に刺さります。
10. Present – 洪安妮
台湾のフォーク・シンガー、洪安妮(ホン・アンニ)の6曲入りEP。前作のデビューアルバムからは約3年半ぶりですが、変わらず穏やかで素朴な美しさの歌と音が嬉しい。
11. Nonante-Cinq – Angèle
ベルギーのアンジェル、3年ぶり2作目のアルバム。パンデミックを反映したような曇り空で哀愁のユーロ・ポップ色が増しており、今の空気に本当によくなじむ。そして現在彼女が住むパリから、遠く離れた故郷を想うブリュッセル讃歌「Bruxelles je t’aime」の素晴らしさ。MVに盛り込まれたパーティーと旅行のイメージは、この2年間の幻のようでもあり、乗り越えて取り戻していくという前向きさのようでもあり、国を超えて感動できるでしょう。
12. jams EP – Luna Li
カナダのトロントのミュージシャン Hannah Bussiere のソロ・プロジェクト Luna Li のコンパクトなインストゥルメンタル・トラック集。ハープやヴァイオリンなど様々な楽器を一人で重ねて作り上げる、ロウファイでドリーミーなステイホーム感が楽しい。随所に入る古典的なギターソロも良い味。複数リリースされたボーカルもののシングルもどれも良かったです。
13. Raio – Domenico Lancellotti
ブラジルの打楽器奏者/シンガーソングライター、ドメニコ・ランセロッチの新作。浮遊感あるギターとピアノと歌声の音響が、複雑に細かく軽やかな生っぽいビートに乗って流れるようにノンストップで展開される、安定の「脳に気持ちいい楽しさ」満載。
14. Um Gosto de Sol – Céu
サンパウロのシンガーソングライター Céu による、初のカヴァー曲集アルバム。古いサンバからジョアン・ジルベルトのボサノヴァ、ミルトン・ナシメント、ジミヘン、シャーデー、ビースティーボーイズまで、多彩な選曲の面白さと、どこかレトロなアコースティック寄りのアレンジでまとめられた心地良さで、楽しく何度も聴けました。
Céu は今年、自身の過去曲をアコースティック・アレンジでセルフ・カヴァーしたアルバム「Acustico」も発表しており、こちらも大変良かったです。
15. Stairs – Stella Jang
韓国のシンガーソングライター、ステラ・チャン(ステラジャン)の5曲入り。やはりコロナ以降の時代の空気を反映しているようで、2階の部屋に暮らす自身の日常を象徴するものとしての「階段」をタイトルに、シンプルなアコースティック調の楽曲で揃えられています。得意のシャンソン風味もしっかり効いてます。
CHEESEとの共演シングル「31」も素晴らしかったですね。
16. Septet – John Carroll Kirby
ロサンゼルスの鍵盤奏者でプロデューサー、ジョン・キャロル・カービーによるヴィンテージでドリーミーなソウル・ジャズ・グルーヴの未来……と言葉ではなんとも説明しづらい不思議な新しさ。とにかく気持ちよくて湯船やベッドでよく聴きました。
17. Bloom – Rosie Frater-Taylor
ロンドンのジャズ・フォーク・シンガーソングライター、ロージー・フレイター・テイラーのセカンド・アルバム。温度低めに軽やかなアコースティックUKソウル感が気持ち良い。一人でギター弾きながらのパフォーマンスが天才みあふれてて素晴らしいのでぜひ観てください(→https://www.youtube.com/watch?v=tC3PoiThQ5U)。
18. GRACINHA – Manu Gavassi
サンパウロのシンガーソングライター、マヌー・ガヴァッシの4作目。映像作品と連動したコンセプトアルバムのようで、各楽曲のMVも見応えあり。もともとはテイラー・スウィフト的なメジャー感のあるポップ歌手のイメージでしたが、一気に幅を広げてジャズやMPBの要素を取り込んだ聴き応えのある内容に驚かされました。
19. De Primeira – Marina Sena
サンパウロのシンガーソングライター、マリーナ・セナのデビュー・アルバム。もともと A Outra Banda da Terra というサイケロックバンドのボーカルで、Rosa Neon のメンバーだった人。キャッチーでポップないかがわしさにファンキもブレーガもレゲトンも取り込んだ、現代の若者世代ならではのMPBという感じが楽しい。
20. Solar Power – Lorde
ニュージーランドのロード、なんといってもソーラー・パワー。寒さが苦手で日差しを求めて沖縄の海辺に通っているような自分にとって、もはやアンセム。スクリーマデリカ的なゆるやかな高揚感も最高。アルバム全体通してアコースティックなサイケデリック・フォークの風味が強くて自然光を感じる快適さでした。
21. En Anglais – Mathieu Boogaerts
フランスのマチュー・ボガートによる英語をコンセプトにした(?)アルバム。素朴でコンパクトでちょっと奇妙なポップさは昔から変わらず。この自由でマイペースな感じに憧れる。シンプルな英語詞もわかりやすくて楽しい。
22. Esperança – Mallu Magalhães
サンパウロ出身のシンガーソングライター、マルー・マガリャンイスの4年ぶりのアルバム。現在はポルトガルのリスボン在住とのこと。全体的にシンプルな手作り感のあるサウンドで、やはり世界共通の時代の空気が反映されている印象。温かみのあるステイホーム感と、いくつになっても変わらぬ歌声とメロディーの可愛らしさが嬉しいアルバムでした。
23. Caetano Veloso Além do “Transa” – Ayrton Montarroyos
ブラジル北東部ペルナンブーコ出身の歌手、アイルトン・モンタホイヨスによるカエターノ・ヴェローゾ楽曲カヴァー集。コンテスト歌番組からデビューした人ということで、文句なしの歌唱力、そして美声。ギターの伴奏のみで歌い上げる一発ライブ録音のシリーズ企画盤ですが、通好みな選曲も良くてただただ心地よく聴けます。
同じシリーズでジョビン集やショーロ集も出しており、どれも安定のクオリティーで楽しめます。
24. Magic Mirror – Pearl Charles
カリフォルニアのシンガーソングライター、パール・チャールズの2ndアルバム。カントリーフォーク×ダンシング・クイーン(ABBA!)な雰囲気のシングル「Only For Tonight」が衝撃的に良くて、アルバムも聴いてみたら全体通して爽やかに郷愁テイスト。インディー~ドリーム・ポップ版のカーペンターズみたいな趣きもあって個人的に大当たりでした。
25. Homme Studio – Henri Salvador
最後にリイシュー部門。アンリ・サルヴァドールが1969年から78年にかけて自宅スタジオで録音していた音源を集めたアルバム。レコード業界を離れ、シンセやドラムマシンを駆使して一人で好きなように音楽を創っていた時期の作品とのことで、好奇心とアイデアにあふれた奇妙でポップな音が満載。これぞロウファイ・ベッドルーム・ポップの元祖、と思って聴くと、もはや時代がわからなくなります。楽しい。
まとめ
以上、2021年によく聴いたアルバムの振り返りでした。
全体のスローガンとしては、ゴージャスよりもシンプル、バンドやグループよりもソロ、ベッドルームにステイホーム、といった感じ。実に2021年ですね。
現在の日本はある程度状況も落ち着いており、個人的にはようやく2年ぶりにライブにも行けた(キング・クリムゾン!)ことも大きな思い出となった1年でした。
来年も良い音楽にあふれる年になりますように。