Camille『OUÏ』~静かに躍動する「カミーユ、声と太鼓」

2019.02.20

フランスのシンガーソングライター Camille(カミーユ)の2017年6月にリリースされた最新アルバム『OUÏ』が、AppleMusicでようやく配信スタートしたので聴いています。待っていた!

……と思ったら、今回配信されているのは、11月24日にリリースされた『OUÏ』のコレクター・エディションに収録された、アルバム全曲を声と太鼓のみで再録音した新バージョン(なぜオリジナルバージョンが配信されないのかは謎 ※現在は配信形態が変わり、オリジナル版が『OUÏ』、声と太鼓バージョンが『OUÏÏ』のタイトルで配信されています)。ジャケットの色もオリジナル版より明るくなっています。

そんなわけで、配信版では収録曲タイトルのすべてにカッコで(Tambour/voix)と付記されています。日本語に訳すと(太鼓/声)。

とは言え、もともとのオリジナル版も声と太鼓が中心で、電子楽器が使われているかどうかの違いなので、基本的なアレンジはほぼ同じ。ある意味より研ぎ澄まされた、エッセンシャルな新バージョンであると言えるでしょう。個人的には大歓迎です。もはや新バージョンのみでもいい感じ。

シンプルに淡々とリズムを叩いていく太鼓。

メロディも素朴で美しいフレーズの繰り返しが多く、どこか民謡のようでもあります。

そこにおそるべき表現力、変幻自在のカミーユの歌声(8曲目「Twix」を是非聴いて)。

ミニマルで静かで、しかし、躍動する世界です。

これまでにもカミーユは、全曲が一つの音で繋がったアルバムや、声とボディパーカッションの多重録音による作品など、実験的でありながらポップな作品を発表していますが、6年ぶりの新作となった今作も相変わらずのセンスで素晴らしい内容でした。

そして、これまでで最も静かで美しいアルバムとなったこの「声と太鼓」バージョンの『OUÏ』。個人的には一番好きです。

1曲目の「2012」はオリジナル版には未収録で、コレクター・エディションにて追加収録された未発表曲とのこと。

オリジナル版のアルバムはこちら。

Camilleとは

カミーユことCamille Dalmais(カミーユ・ダルメ)は、1978年生まれのフランスの女性シンガーソングライター。

2002年にアルバム『Le Sac des filles』でデビューしました。ファーストはちょっと尖ったおしゃれな新世代シャンソンポップみたいなイメージで日本でも国内盤がリリースされたりしましたが、実際はちょっとどころじゃない先鋭派。2005年のセカンド『Le fil』が全編ほぼセルフ多重録音アカペラコーラス+ベースという編成で、全曲が共通の通奏低音で繋がっているという衝撃作。そしてそれがしっかりヒットするのがフランス。一躍人気アーティストとなり、以降2008年に『Music Hole』、2011年に『Ilo Veyou』というアルバムを発表しています(その他ライブアルバムが2作あり)。

『OUÏ』は6年ぶりとなる通算5作目。フランスでは販売チャート1位を記録しています。

余談:
自分は複雑に練りこまれたカラフルな音楽作品も好きなのですが、最終的にはミニマルに絞り込まれた音のみによる静かな作品こそが一番素晴らしい、と思っているタイプなので、そんな意味でも今作『OUÏ』は最高に好みな音でした。

「静寂より素晴らしいのはジョアンだけ」という格言(byカエターノ・ヴェローゾ)がありますが、ミニマルで静かな名盤といえばそのジョアン・ジルベルトの『3月の水』。カエターノ・ヴェローゾでは『ジョイア』というアルバム。気になったらあわせて聴いてみてください。

Musicレビュー

2017/11/26 (更新:2019/02/20)

書いた人:

一人旅ときどきギターと太鼓。年々増していく時の流れの速さと記憶力の低下に危機を感じ、いろいろなことを記録しておくために書き始めました。元CDショップ店員。現在はIT系のエンジニア。寒さに弱すぎるため旅行先は基本的に南の島です。釣りたい魚はアカジンミーバイ。

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