2018年によく聴いたアルバム15選(ブラジル音楽編)
2019.01.27
遅くなりましたが、2018年によく聴いたアルバム15枚(ほぼデジタルなのでもはや「枚」ではないですが)、ブラジル音楽編です。
2018年によく聴いたアルバム20選(ジャンル関係なし)
Twilogをたどりながら振り返っていったのですが、あれもこれもと大量に入れてしまうと、(ブラジル音楽など日本に届く情報が限られているジャンルの場合は特に)「話題作全部並べただけ」みたいになってしまいがちなので、あえて15枚に絞り、あえて順位をつけました。
とりあえずブラジルであれば、という括りなのでMPBもインディーポップもジャズも全部混じっています。
Contents
- 1. Mahmundi “Para Dias Ruins”
- 2. Laura Lavieri “Desastre Solar”
- 3. Silva “Brasileiro”
- 4. Amaro Freitas “Rasif”
- 5. JosyAra “Mansa Fúria”
- 6. Rubel “Casas”
- 7. Julia Branco “Soltar os cavalos”
- 8. Luiza Lian “Azul Moderno”
- 9. Tunico Villani e Grupo Karakuru “Karakuru”
- 10. Saulo Duarte “Avante Delírio”
- 11. Leonardo Marques “Early Bird”
- 12. Kiai “Além”
- 13. Anelis Assumpção “Taurina”
- 14. Samuca e a Selva “Tudo Que Move É Sagrado”
- 15. Phill Veras “Alma”
- まとめ
1. Mahmundi “Para Dias Ruins”
リオの女性シンガーソングライター Mahmundi(マームンヂ)のフルアルバムとしては2作目。宅録シンセポップ的な音と真夏のブラジル80年代ヒット的な歌メロが魅力ですが、今作はさらにR&B的な雰囲気が強まり秋冬向けなしっとり感。生っぽい音も前面に出てきて「Outono」や「As Voltas」などに漂うレトロなMPB色も最高。そして至福のレゲエ「Qual É A Sua?」でよみがえる夏。
こういうちょっと「引いた」感じの、控えめなサウンドが最近の好みです。
2. Laura Lavieri “Desastre Solar”
サンパウロの女性歌手 Laura Lavieri(ラウラ・ラヴィエリ)のソロデビュー作。もともとMarcelo Jeneci(サンパウロのアーティスト)の作品にボーカリストとして参加していた人。
レトロフューチャーなSF感あふれるオープニングからソウルでサイケデリックなロックに展開したかと思えばこれがNovos Baianosのカバー「Radical」。さらに激ファンクな「Respeito」が炸裂し、その後も60~70年代の香り漂うマジカルでパワフルなサウンドがどこまでも続く。マルコス・ヴァーリの「Tira a mão」も嬉しい。ラスト2曲の壮大な宇宙感も強烈(「Estrada do Sol」はジリオラ・チンクエッティのカバー)。まさにスペース・ロック。とにかく楽しいアルバムです。
3. Silva “Brasileiro”
エスピリトサント州ヴィトーリオ出身の男性シンガーソングライター Silva(シウヴァ/シルヴァ)の5作目。
Mahmundiと同じくもともとエレクトロニックとインディーポップが融合したような作風のイメージが強い人ですが、前作のマリーザ・モンチ曲集に続いて正統派MPB路線全開。カエターノ的なジェントルな歌声が前面に出て、ボサノヴァ要素も入ってソフトで繊細、コンパクトな珠玉の全13曲。ずっと聴いていられる心地よさ。今やスーパースターなAnittaの新たな魅力を引き出すデュエット「Fica Tudo Bem」もお見事。
伝統スタイルの下地にさりげなく、自然にデジタルで現代的なサウンドが仕込まれているところもやっぱり面白い。
4. Amaro Freitas “Rasif”
ペルナンブーコのジャズ・ピアニスト Amaro Freitas(アマーロ・フレイタス)の2作目。スタンダードなピアノ・トリオ編成でありながら、ブラジル北東部のリズムを盛りに盛った躍動感あふれる展開がとにかくかっこいい。まだ20代らしいです。
5. JosyAra “Mansa Fúria”
バイーアの女性シンガーソングライター JosyAra(ジョジアーラ)の2作目。アフロ・ブラジル的な楽曲をアコースティックなヴィオラォン(ガットギター)弾き語りで聴かせる伝統的スタイル、と思いきや、次第に熱く深くサイケデリックに展開していくサウンドに引き込まれます。ダブ的な音響操作が随所に盛り込まれているのも面白い。
6. Rubel “Casas”
リオの男性シンガーソングライター Rubel(ルーベル/フーベウ)の2作目。根っこの音楽性はインディー・フォーク的な歌ものの印象ですが、ミニマルに柔らかく淡々と流れる静けさと美しいメロディーに、現代的なエレクトロニクスとビートが溶け込んでいくような、不思議な聴き心地。気持ちよく染みるエモみという感じ。サンバ~ボサノヴァ的な曲がある一方で、EmicidaやRincon Sapienciaがゲスト参加するなどHIPHOPにも接近。それでもブレない統一感が実に「アルバム」。
7. Julia Branco “Soltar os cavalos”
ミナスの女性シンガーソングライター Julia Branco(ジュリア・ブランコ)のデビュー作。アドリアーナ・カルカニョット系のインテリジェンスを感じさせる声と音がクール。全体的に静かでミニマル、音響操作もありつつ、曲はあくまでポップな歌ものになってるのが良いです。
収録曲のうち6曲は一連の映像作品になっておりVideo AlbumとしてYouTubeで公開されています。
Soltar os cavalos | Julia Branco | vídeo-álbum oficial – YouTube
8. Luiza Lian “Azul Moderno”
サンパウロの女性シンガーソングライター Luiza Lian(ルイザ・リアン)の3作目。2017年の前作「Oyá Tempo」に引き続き、幻惑的、瞑想的な音響の波に包み込まれるようなオルタナMPB。ダークでアヴァンギャルドながら歌メロはしっかりブラジル的にエモーショナルな面白さ。共同プロデュースに日本でも人気のTim Bernardesが参加しています。
9. Tunico Villani e Grupo Karakuru “Karakuru”
打楽器奏者の Tunico Villani(トゥニコ・ヴィラーニ)率いるミナスのグループ Karakuru(カラクル)のファーストアルバム。Uakti(ウアクチ)のPaulo Santosが音楽監督を勤めており、音楽性もまさにそんな感じ。ガラスのマリンバと木琴を中心にした不思議なサウンドの打楽器アンサンブルによる美しい作品です。眠るときのBGMによく流しました。
情報が少ないのですが、どうやらTunico Villaniは音楽教師でもあり、Karakuruは地域の社会文化プロジェクト的な団体のよう。
10. Saulo Duarte “Avante Delírio”
パラー州ベレンの男性シンガーソングライター Saulo Duarte(サウロ・ドゥアルチ)のファースト・ソロ・アルバム。普段はA Unidadeというバンドを率いて活動している人。
伝統をしっかり受け継いだ正統派MPBという感じで、70年代風のバンド・サウンドにのせて軽やかにイイ曲を歌っています。こういうのは無条件で好き。
11. Leonardo Marques “Early Bird”
ミナスの男性シンガーソングライター Leonardo Marques(レオナルド・マルケス)の3作目。60年代の知る人ぞ知る名盤の再発? かと思わされるジャケットデザインそのまま、アナログでドリーミーでイージーリスニングな、時代を超越する良い音が詰まっています。とにかく気持ち良い。風呂向け。ジョン・レノンにも影響を受けているそうで、ボーカルの独特の浮遊感などなるほどという感じ。
12. Kiai “Além”
リオ・グランヂの3人組 Kiai(キアイ)のファースト・アルバム。基本はピアノ・トリオ編成によるジャズですが、ブラジル要素に加えてプログレ~ポスト・ロック的な方向性も感じられ、とても刺激的な演奏。以前は4人組だったとのことで、ギターのメンバーも数曲に参加しています。
13. Anelis Assumpção “Taurina”
サンパウロの女性シンガーソングライター Anelis Assumpção(アネリス・アスンサォン)の3作目。Tulipa RuizやCéu、Ava Rochaなどなど嬉しい顔ぶれのゲストも参加したアヴァン・ポップでコンパクトな楽曲集。
14. Samuca e a Selva “Tudo Que Move É Sagrado”
サンパウロのラテン・ミクスチャー楽団 Samuca e a Selva(サムッカ・イ・ア・セウヴァ)によるホナルド・バストス楽曲集。ミルトン・ナシメントなどクルビ・ダ・エスキーナ周辺の名曲の数々をアフロビート×ラテン・ファンクなアレンジでカバーしています。単純に楽しい。Crioloほか、ゲストにも注目。
15. Phill Veras “Alma”
マラニョン出身の男性シンガーソングライター Phill Veras(フィル・ヴェラス)。どこか70年代的なUS/UKのシンガーソングライターものやAORに通じる味わい深さ。ジェントルに爽やかですが、根っこにはロックンロールがありそうなところも良いです。
まとめ
わかりやすく同系統でまとまった感じ……。昨年度と比較してみると、最新の尖った音をあまりチェックしなくなったというか、生活環境が変わるとやはり聴くものの傾向も変わってくるのでしょうか。以前は仕事中にヘッドホンで新譜チェックなどをしていたのですが、最近は音楽を聴くのがほぼ夜と休日のみなので、その影響もありそうです。ゆっくり落ち着いて聴けるものが優先されるわけね。というわけで、そういうのが好みの方には全部おすすめです。
漏れたものでは、DUDA BEAT、Dingo Bells、MC ThaのアコースティックEP、Carlos Maltaのカイミ曲集、illy、Pabllo Vittar、Karol Conka、Bike、Negra Liなどが印象に残っています。愉快なヴェローゾ家のライブ盤は特別枠。
というわけで、今年もよろしくお願いいたします。
Faliz Ano Novo!
2018年によく聴いたアルバム20選(ジャンル関係なし)